FXの移動平均線とは?2つの種類の特徴と見方、使い方

2022/5/13

FXでは、為替レートの過去の値動きから将来の価格を予測する「チャート分析」が重要といわれています。そして、チャートを分析するためのツールとして有効なのが「移動平均線」です。しかし、移動平均線が示す意味や、取引にどのように役立つのか、取引の経験がない方にはイメージするのが難しいでしょう。

本記事では、移動平均線の定義や実際の取引における使い方を解説します。多くのトレーダーが利用する移動平均線についての理解を深め、取引に活用していきましょう。

そもそもFXとは?という方はこちらをご覧ください

FXにおける移動平均線とは?

FXではチャート分析に使える多くの指標があります。その中で、移動平均線は何を表す指標なのでしょうか。

移動平均線とは一定期間における終値の平均値の変化を表したグラフ

FX移動平均線を示した図

FXで取引を行う際の各通貨ペアのレートは頻繁に変動しているため、過去の値動きを表す「チャート」は多くの場合ジグザグになります。移動平均線はチャートのブレをならし、相場の方向性を判断しやすいようにしたテクニカル指標です。相場の方向性は「トレンド」とも呼ばれ、移動平均線を使うと、トレンドの強さやトレンドが開始または終了するタイミングを把握しやすくなります。
(※テクニカル指標とは、チャートの形状から将来の値動きを予測する「テクニカル分析」で用いられる指標のことです。)

1日の最後の価格を「終値」と呼びます。移動平均線は終値の平均値を、一定期間ごとに算出しつなぎ合わせたものです。たとえば算出する期間を10日にした場合は、直近10日間の終値を合計し10で割った数字をとります。翌日以降は1日ずつずらしたものを順に結んだ線が移動平均線です。

平均を算出する期間を5日とした場合は5日移動平均線とよばれます。短期・中期・長期の移動平均線として、5日・25日・75日移動平均線が使われるケースが一般的です。

移動平均線は開発されてから100年ほど経っており、数あるテクニカル分析の中でもポピュラーな指標となっています。

代表的な移動平均線は2種類

移動平均線にはさまざまな種類があり、よく使われるのは以下の2種類です。

  • 単純移動平均線(SMA)
  • 指数平滑移動平均線(EMA)

「単純移動平均線(SMA)」は、一定期間を対象として終値の平均値をつなぎ合わせたものです。過去の価格を均等に平均するため、相場の急激な動きには反応しづらい特徴があります。特に長期の移動平均線は平均化に用いる価格が多いため、直近の値動きによる影響は限定的になります。こうしたことから、大きなトレンドを把握するのに有効な指標です。

最近の価格に比重を置き、終値の平均値を決定するのが「指数平滑移動平均線(EMA)」です。相場の変化に素早く反応し、トレンドの転換を早めに確認できるのがメリットです。単純移動平均線(SMA)のデメリットをカバーでき、バランスが取れたテクニカル指標といえます。

しかし、反応が早いぶん「ダマシ」が発生するリスクも高くなっているのがデメリットといえるでしょう。「ダマシ」とは、買いのサインや売りのサインが出ているにもかかわらず、実際の値動きはサインとは反対の動きをすることを指します。

FXの移動平均線の見方と使い方

移動平均線については定義だけではなく、どのような場面で役立つのかを知っておくのも重要です。移動平均線の見方や具体的な使い方を説明します。

移動平均線の見方

移動平均線が上向きのときは、基本的に上昇トレンドです。下向きなら下降トレンドと判断されます。明確な方向感がなければ、もみあい相場と判断できるでしょう。

また、移動平均線の位置や角度によっても相場を分析できます。下の図のように移動平均線よりも価格が上にある状態が継続している場合には上昇トレンドです。下にあれば下降トレンドと判断できます。

上昇・下降どちらのトレンドを示している場合でも、移動平均線の角度が急であるほど勢いが強く、トレンドが継続する可能性が高くなります。ただし、値動きが急である分、反転するケースもあるため、注意を要します。

移動平均線の使い方

移動平均線を読み解くことで、実際に売買するポイントを判断できるケースがあります。

FX移動平均線を確認している図

たとえば、価格は移動平均線に近づく傾向があります。移動平均線と価格がある程度乖離したときには、価格は移動平均線に近づこうとすると捉えて、売りまたは買いのタイミングのヒントにするとよいでしょう。

また、2本の移動平均線を使った分析手法があります。短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上へ突き抜ける状態となった場合は「ゴールデンクロス」とよばれ、上昇トレンドに転換する示唆として、買いのタイミングと判断する投資が活発になります。

反対に、短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に突き抜ける現象は「デッドクロス」です。下降トレンドに入ることを示しており、売りのタイミングと判断する傾向が強まります。

これらの指標を用いた分析は、100%確実といえない点には注意が必要です。ゴールデンクロスやデッドクロスが発生するのを見込んで注文が集まり、理論通りの値動きをしない「ダマシ」が発生する可能性があります。

価格と移動平均線の位置関係をもとに具体的な売買のシグナルを導き出す理論としては、グランビルの法則が有名です。米国のチャート分析家のJ.E.グランビルにより編み出され、FXだけではなく株式投資にも用いられています。
ただし、グランビルの時代はインターネット環境やAI売買ソフトなどのツールもなかったため、理論通りに動くわけではありませんが、FXで取引するうえでの基礎知識として覚えておいても損はないでしょう。

買いのサイン、売りのサインとされるケースとして、以下のようなものがあります。

<買いのサイン>

買い意欲が強いことを示す 移動平均線が長期間下落または横ばいで推移した後、上向きに転じたときに価格が移動平均線を下から上に突き抜けた場合
利確が入った後、買い意欲が継続されることを示す 移動平均線が上向きかつ価格が移動平均線を上回っているときに、一旦価格が下落し移動平均線を下回るも、再度上昇し移動平均線を下から上に突き抜けた場合
一端、利益確定の売りで下落したものの、買い意欲が強い状況を示す 移動平均線が上向きかつ価格が移動平均線を上回っているときに、一旦価格が移動平均線の手前まで下落するも移動平均線を下抜けることなく再度上昇した場合
売り方の利確(買戻し)や新規買いの動機刺激を示す 価格が移動平均線の下に大きく乖離した場合

<売りのサイン>

売り意欲が強いことを示す 移動平均線が長期間上昇または横ばいで推移した後、下向きに転じたときに価格が移動平均線を上から下に抜けた場合
上げ転換を疑う動きを誘ったり、売りそびれた投資家がやれやれの売りを出したりする可能性を示す 移動平均線が下向きかつ価格が移動平均線を下回っているときに、一旦価格が大きく下落するも再度上昇し移動平均線を上抜けした場合
買い意欲の失速を示す 移動平均線が下向きかつ価格が移動平均線を下回っているときに、一旦価格が上昇するも移動平均線の手前で止まり再度下落した場合
利確実行で反落の可能性を示す 価格が移動平均線の上に大きく乖離した場合

移動平均線はFXで有用なツール

円マークとFX移動平均線

移動平均線は相場のトレンドだけではなく、買いや売りのサインも読み取れることがあるため、理解すればより効率的な取引ができるでしょう。

チャートを読み解くテクニカル分析を難しいと思っている人は多いかもしれません。しかし移動平均線はゴールデンクロスやデッドクロス、グランビルの法則など売りと買いのサインが一目でわかる指標になっています。

ただし移動平均線で示されるシグナルは絶対的なものではないため、取引に慣れてきた後はほかの手法と組み合わせて使うことが重要です。

<監修者>

木村佳子

<プロフィール>

一級FP技能士(国家資格)。NPO法人 日本FP協会上級資格CFP。IFTA国際テクニカルアナリスト連盟最上位資格MFTA®の日本で最初の女性取得者。早稲田大学大学院ファイナンス研究科専門職MBAファイナンス修士。日本ベンチャー学会。日本IR学会。生活経済学会。消費者行動学会正会員。YouTube 「木村佳子チャンネル」で資産運用情報を発信中。

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